デジカメ・カラープロファイルの活用

1.カラープロファイルって何?


(1-a) 人間が知覚可能な色の範囲に対して各種機械・メディアの色空間は限られている(三角内がsRGBの色空間)。
(1-b) 色空間は各々異なる色の定義を与える。例えばR=#00, G=#FF, B=#66はAdobeRGBでは左、sRGBでは右になる。
デジカメ、モニター、プリンターなど、イメージを入出力する機械は、各々に異なる色の再現性(発色、色域)を持っています。それらの間でデータを受け渡しするときに、その機械固有の色空間が標準として定められた色空間とどのように対応するかを示す表がなければ、色の一貫性が保てません。いわば色空間は言語であり、通訳として働く色合わせの表がカラープロファイルで、International Color Consortium (ICC)が国際的な規格を定めています。

※ カラープロファイルに関わってよく耳にするのは、モニター上で見るのと印刷した結果の食い違いです。モニターと、プリンター&プリント用紙の色調整、色合わせで生じる問題ですが、これについては比較的よく説明を目にするので扱いません。

ここで注目したいのはデジカメのカラープロファイルです。最近はsRGB(*)よりも色空間が広いAdobeRGBで撮れるデジカメも増えてきたようですが、ほとんどのデジカメはsRGBの色空間で、さらにメーカー毎、機種毎に個性があります。

(1-c) 赤線の範囲がsRGBの色空間。黒線の範囲がC3030の色空間。(図はDigital Domain Incから)

※ sRGBは、マイクロソフトなどが一般的なディスプレイの色域をもとに提唱した色空間で、画像にICCをいちいち埋めこまなくても、各種デバイスのメーカーがこの色空間を標準にすることで一般消費者用デバイス間で一貫性のあるデータの受け渡しができるようにと考えられました。この普及によって通常はデバイス毎のカラープロファイルを利用せずにすんでいます。しかし、汎用性を高めるために狭い色空間にされたこと(最近のプリンターの色空間の方が広い)、またsRGBに準拠しているはずでも実際にはメーカー、デバイス毎に違いがあることから、カラープロファイルを用いるメリットが出てきます。

これまで使ったデジカメでは、OLYMPUS C-3030Zは淡泊な寒色系、CANON G2とSANYO MZ3は濃い暖色系になる感じです。機種毎の色味の傾向を決めるのは主にはデジカメ内部あるいはRAWコンバージョンでの処理の際の、ホワイトバランス、彩度、コントラストの設定ですが、さらに各カメラの色空間の特性も影響するのです。

カラープロファイル(ICC)は小さなデータのセットで、iccまたはicmの拡張子を持ち、500Bから400KBぐらい、AboutDigiCamのG2用で24.5KBあります。デジカメのICCは、各画像に埋めこみ、ICC対応のアプリケーションがそれに基づいて画像の色空間をモニターでの表示用、印刷用などの色空間に解釈・変換するという形で利用します。画像にICCが埋めこまれていなくても、システムがICCをもっていれば対応アプリケーションで指定して利用できます。ICCが埋めこまれても画像データそのものは変化しないので、例えばICCに対応しないビューワーで見ると、埋めこんだ画像と埋めこんでいない画像は全く同じに表示されます。

2.本来の使い方で試す

まずは以下の例をご覧ください。フォトショップで、Canon-G2-TrueColor-Non-Linear.icm (AboutDigiCam)、c3030.icm (Digital Domain Inc)を使って、各々の色空間をsRGBに知覚的に変換しました。表示されているのはICC適用前の写真で、マウスのポインターを画像の上に持ってくると適用後の写真が表示されます(*)(画像が変わらないときはダウンロード中ですのでしばらくお待ちください)。画像をクリックすると別ウィンドウの大きなサイズの写真で効果を確認できます。

※ 「ICCを適用した画像」として、ICCを埋めこんで、さらにsRGBに変換した画像を提示しています。ICCを埋めこんだ写真がICC対応アプリでどう見えるかを示すためです。
※ このページの写真は、断らない限りはリサイズ済み、ノーレタッチです。

(2-a) by CANON G2 (2-b) by OLYMPUS C3030Z
Canon-G2-TrueColor-Non-Linear.icm適用 c3030.icmを適用
1/640 sec, f/4.0, Mode: Program, ISO: 50, White balance: Daylight, Saturation: Normal, Sharpness: Normal, Contrast: Normal 1/160 sec, f/2.8, Mode: Program, ISO: 100, White balance: Auto

左は初夏のプロヴァンスのまぶしい光、青空のもとで撮った写真で露出オーバー気味、右は冬のジュネーブ・欧州国連本部で曇天のもと撮った写真で典型的(と私が感じる)C3030Zの色味になっています。どちらも、カラースペースを適用して変換したら、色のりのよい写真になりました。

どちらも、色味を濃くしたいケースでしたので、次に違うタイプのものに適用してみました。画像をクリックすると別ウィンドウが出て大きなサイズで効果を確認できます。

(2-c) by CANON G2 (2-d) by OLYMPUS C3030Z
Canon-G2-TrueColor-Non-Linear.icm適用 c3030.icmを適用
1/640 sec, f/5.6, Mode: Program, ISO: 50, White balance: Daylight, Saturation: Normal, Sharpness: Normal, Contrast: Normal 1/4 sec, f/2.8, Mode: Program, ISO: 200, White balance: Auto

見ての通り、かえって、元のままの方がよい感じです。(2-c)はもともと黄-青のカラーバランスが崩れていますが、ICCの適用で、黄色が褪せ、青が濁り、バランスの崩れが目立つようになりました。(2-d)はオートホワイトバランスの補正が効いていたのがうち消されて、白色灯の低い色温度が強調されたようになりました。

カラープロファイルは「より正確な色再現」を実現してくれるはずのものですが、あらゆる場合に使えるわけではなさそうです。

そこで、今メインで使っているCANON G2について、さらに様々なデータで試してみました。AboutDigiCamの他にPOPPHOTO.COMでもG2用のカラープロファイル(無料)を見つけたので、あわせて効果を観察しました。

ちなみに、AboutDigiCamのICCはRAWデータでの、POPPHOTOのICCはJPEGで撮影されたデータでの利用が前提とされていますが、いろいろ試した限り、どちらもRAW、JPEGデータで同様な効果が見られました。また、POPPHOTOのICCには、昼光またはフラッシュで撮影されたデータ向けと断りがあり、一つのICCであらゆるホワイトバランスのデータには対応できないと説明がありました。AboutDigiCamのICCにはデータのホワイトバランスに関して記述はありません。

私なりの結論は以下の通り。画像をクリックすると別ウィンドウが出て大きなサイズで効果を確認できます。

(2-e) AboutDigiCam (2-f) AboutDigiCam
(2-g) POPPHOTO (2-h) POPPHOTO
  • AboutDigiCam:Canon-G2-TrueColor-Non-Linear
    トーンカーブを少し引き下げる感じ。赤、黄の純度の高い色がある場合、それらが消えて褪せた感じになってしまう:(2-e)。逆に空などの青色は目立って濃くなる:(2-f)。淡い青色がポイントの写真には向かない。それ以外の場合は色のりがよい感じになるので使うとよいかもしれない。
  • POPPHOTO:CanonG2_Day_Flash.icc
    トーンカーブを持ち上げ、コントラストも高くする感じ。明るい部分がかなり飛んでしまう:(2-g)。(※(2-g)は(2-a)の手前の石の部分)暗い部分はうきあがるが。色合いはあまり変わらない。少し青味を抜く感じ。ハイライト部分が少なく、コントラストが弱いデータなら、青かぶりもとってくれていい感じになることもあるが、レタッチで簡単に実現できる範囲:(2-h)。

いずれのICCも正確な色再現を助けてくれるかというと、そうは言えないようです。AboutDigiCamのICCを使ったときの純度の高い赤と黄の褪色は、身近なものを撮影して現物と比べてみてもはっきりしています。POPPHOTOのICCは「正確な」ではなく「好ましい」色再現を指向している印象を受けます。もっともコントラストがかかりすぎて、好ましくなくなってしまうことも多いのですが。

ただし、これは最終出力先がモニターの場合(ウェブ用などでsRGBに変換して利用する場合)で、プリント目的なら違う結論が出るかもしれません。また、AboutDigiCamが勧めているのは、ここで利用したRAWのノンリニア変換+ノンリニア変換データ用ICCではなく、リニア変換+リニア変換データ用ICCです。AboutDigiCamのICCは、リニア用もノンリニア用も、後処理(レタッチ)を前提としているということなのかもしれません。また、DPREVIEWのフォーラムで検索をかけると、他機種ですが、ほとんど全ての写真に適用してよい効果が見られたというICCの話なども出てくるので、ICCの出来はかなり様々なようです。

色の正確な再現ということを気にするのであれば、デジカメICCにこだわるよりも、同一ライティング毎にグレーチャート、カラーチャートを入れた写真を撮っておいて、それを元にレタッチでホワイトバランス、カラーバランスを取る方が効果が大きそうです。お気軽デジカメユーザーのKUMANOMIにはあまり向いていないように思いますが。QPColorkitを使うとそれも手軽にできそうなので、試してみたいと思っています(アマチュアにはちょっと高い値段ですね…)。

3.ベルビアを試す

さて、今回デジカメのカラープロファイルに注目したのは、日本ではKAZUTOKUさんがマニュアルを日本語化して紹介されているBreezeBrowzerのRaw変換の設定を点検していて、BreezeBrowzerが利用しているICCを開発したAboutDigiCamが、ベルビアと名付けたICCを出していることに気づいたことがきっかけでした。ベルビアという名前は、フジの鮮やかな発色で知られるリバーサルフィルムから取っているのでしょう。

デジカメのカラープロファイルの利用は、本来は各カメラの特性を適切に解釈してより正確に色を再現するためのもの、言葉を換えて言えば、いわば個性をなくすためのものです。ところがAboutDigiCamでは、逆に個性的な色表現をするためのカラープロファイルも出しているのです。

AboutDigiCamのTrueColor ICC Profileセットには、ノーマルのプロファイルに加えて、ベルビアのHigh, Mid, Lowと赤外線の、計5つのプロファイルが入っています。AboutDigiCamのサイト上でも、これらの適用効果のデモを見ることができますが、以下にあれこれと試してみましたので、ご覧ください。サムネイルをクリックすると800x600の画像が見られます。

(3-a) ノーマルICC (3-b) ベルビア(low) (3-c) ベルビア(high)
(3-d) WB: Cloudy (3-e) WB: Fluorescent-H (3-f) 彩度+35

元データは、初冬の曇天の夕方に、CANON G2でホワイトバランスを昼光にして撮りました。RAWで撮っているので、RAW変換の時にホワイトバランスを変えることができます。そこで、AboutDigiCamのノーマルICCでsRGBに変換したものを基準に、BreezeBrowzerのプリセットホワイトバランスを替えて変換したもの、フォトショップで彩度を上げたものも並べてみました。

ベルビアのLowを適用した(3-b)とFluorescent-HでRAW変換した(3-e)は、彩度だけでなく色合いもほぼ全く同じ結果になりました(大きいサイズで比べてみてください)。ベルビアICCを適用したものと、フォトショップで彩度を上げたものでは、彩度は同じぐらいでも、色のバランス、コントラストが明らかに異なります。

どうですか?ノーマルICCは無料ですが、TrueColor ICC Profileセットは25ドルします。それだけの価値があるかどうか。微妙なところかもしれません。色は好みの問題ですが、階調があまり犠牲にならないのはベルビア(low)ぐらいまでで、BreezeBrowzerを使っているならRAW変換の時にホワイトバランスをかえることでその程度までは簡単に同じ効果を再現できるのですから。

メリットとして考えられるのは、

  • 既にJPEGで撮られた写真にも適用できる。JEPGで撮っても、RAW変換でホワイトバランスを変えるのとほぼ同じことが簡単にできる。
  • 彩度を簡単に思い切って上げることができる。(3-c)と(3-f)の比較で分かるように、ベルビアICCを使うと雰囲気のある彩度が高い写真にすることができる。同じことをレタッチでやろうとすると手間がかかる。
  • レタッチするのと違って、ICCを埋めこんでも元の画像データから失われるものがない。したがって、最終出力先まで質を最大限に保つことができる。(このメリットは未検証ですが。)

人間が記憶する色は実際よりもかなり彩度が高いものなので、写真を簡単に記憶に近づけることができるという意味では、一般デジカメユーザーが注目していいものだと思います。じっくり見ることは少ないと思われるウェブ上の写真ギャラリーを作るとき、特に彩度の高さが印象的だった風景を再現したいとき、撮影条件が悪くて地味になってしまった写真の見栄えをよくしたいときなどに使用するといいかもしれません。

ただし上記のノーマルなICCと同じ性格が見られるので、カラーバランスが崩れている写真、純度の高い赤や黄、または淡い青が含まれる写真には向かないと思います。

4.入手方法、ICC対応アプリ紹介

(1) デジカメ・カラープロファイル(ICC)の入手方法

AboutDigicamDigital Domain IncPOPPHOTO.COMのサイトで、配布・販売されています。無料のものも、有料のものもあります。ちなみにG2用のノーマルICCは無料、ベルビアのセットは$25、C3030用は$12.99でした。AboutDigiCamとDigital Domain IncのICCは機種が限られています。Digital Domain Incは評判が高いですが、サイトが最近はアップデートされていません。支払い方法はPay Palが使えます。英語が苦手な人は、KAZUTOKUさんのサイトの「みんなの掲示板」で過去ログの検索をかけると具体例でのPay Pal利用の説明が見つかります。

(2) ICC対応のアプリケーション

  • BreezeBrowzer: RAWからのコンバージョンでICCを埋めこむことができます。ICCが付いたデータは、それに従って表示されます。ICC対応であることの他、CANON純正のものよりも、RAW変換で細かく設定できること、ビューワーが優秀で表示が早く、EXIF、ヒストグラムが確認でき、画像を任意の順番で並べ替えることができる(比較にとても便利)など、メリットがたくさんあります。しかし、有料($44.95)で、英語版しかありません。KAZUTOKUさんがマニュアルを日本語化しています。同じBreezeSystemsの無料のDownloader v1.5もお勧めです。
  • DPEx: 和製ソフトでは珍しく(だと思う)、ICCに対応している画像ビューワーです。3500円のシェアウェア。チャンネル→色管理の設定で入力画像とモニターのプロファイルを設定でき、カラーマネージメントを有効にしておくと、プロファイルを解釈して画像を表示します。ですので、簡単にICCが埋めこまれていない画像にICCを適用して見ることができます。ただカラーマネージメントを有効にした場合の画像表示は遅いです(BreezeBrowzerと比べて)。また、ICCを埋めこんだり、ICCに基づいて印刷したりはできません。ちなみにDPExが特に優れていると思うのはExifデータで画像を整理できることです。私はデジカメの画像ファイルは、撮影日時にファイル名を変更して、複数のデジカメのものを一緒にしているのですが、デジカメ毎にファイルを選び出したい時などに、このソフトを重宝しています。
  • Photoshop: フォトショップはバージョン5.0からICCに対応しました。画像を開くとき、あるいは開いてから、色空間を適用することができます。しかし、Photoshop5.xでは、色空間を変換しても、保存の時に、変換先の色空間ではなくて、書き出した側の作業スペースのプロファイルがタグ付けされてしまうという問題があります。このレポートで書いた範囲内の作業には影響しないのですが。私はVer.5.5を使っているので、近々出るらしいVer.8でグレードアップしようと思っています。
  • QImage: デジカメ、モニター、プリンターのICCを設定できるので、一度設定してしまえば最良の印刷結果を簡単に出せる…ということで、海外では評判のようです。私は使っていないので、それ以上のことは言えないのですが。Digital Domain Incで$39.95で販売しています。Digital Domain Incの製品では他にモニターカリブレーション、デジカメ、スキャナー、プリンターのICCを作成できるProfile Prismというものが$79で売っています。日本には、なぜこのような一般デジカメユーザー向けのカラーマネージメントツールがないのでしょうか。

5.参考になるサイト

(日本語)

(英語)


2003/10/23 (c) KUMANOMI

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